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2016-02-03

「河明り・老妓抄」岡本かの子

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02:「河明り・老妓抄」岡本かの子

(文庫本→布装厚表紙)

Q1:あなたがこの本と出会ったきっかけは?
母が大事にしている古い文学全集の中の一冊に「岡本かの子全集」がありました。
文学全集を読むことは、私の受験時代に許された唯一の娯楽でしたが、数多くの作者、作品の中でもなぜか岡本かの子の「老妓抄」が強く印象に残っています。

Q2:この本のどんな所が気に入っている?
老妓からにじみ出る生命力が好きです。
老妓が、自らの制約された人生においては叶わなかった自由な生き方をある青年に託す、という一見消極的な筋なのですが、老妓自身はむしろ生き生きと描かれており、その様が小気味よい作品です。

Q3:どんな時に、どんな状況で、この本を読みたい?
仕事がひと段落ついた時などに。短編ですが、ゆっくりと時間をかけて読みたい。

Q4:一番好きな言葉や場面は?
青年「そりゃそうさ。こんなつまらない仕事は。パッションがおこらないからね」
老妓「パッションてなんだい」
青年「パッションか。ははは、そうさな、君達の社会の言葉でいうなら色気がおこらないってことだ」
パッションを「色気」と表しているところにはっとさせられた。

空想製本屋から
「年々にわが悲しみは深くしていよいよ華やぐいのちなりけり」…。
若い頃のような表面的な美しさではなく、年を重ねたいのちから湧き出る色気や美しさを老妓は持っている。
布装、くるみ製本。表紙布には柿渋で染めた布を用い、移りゆく色が楽しめるように。また、型染めに用いる型紙「渋紙」をはめ込み、華やかな着物を支える裏方の美を、表しました。

*コメントは、持ち主の方の許可をいただいて掲載しています。