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2017-09-11

「美の世界」佐藤春夫

 

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033: 「美の世界」佐藤春夫
糸綴じ、くるみ製本 半革装
手染め装飾紙、銀箔押し

Q1:あなたがこの本と出会ったきっかけは?

佐藤春夫の研究者である河野龍也さんの講座で初版限定本の実物を見せてもらい、自分でもほしくなって古書店で購入。
※ただし、わたしが買ったのは普及版のほう。

Q2:この本のどんな所が気に入っていますか?

著者ならではの審美眼で選んだ詩歌を季節に合わせて紹介しているところ。日本だけではなく、中国やヨーロッパの詩も取り上げているし、お坊さんが枯れ野原で大便をしている俳句(28ページ)が入っていたりして、バラエティに富んだ「美」を味わえます。同じテキストは全集で先に読んでいましたが、この挿画と装幀があったほうがよりいっそう言葉の美しさが伝わる気がしました。

Q3:一番好きな言葉や場面は?

芥川龍之介の「相聞」を取り上げたところ(135ページ)。早くに亡くなった同い年の友人を思い出しながら書いている感じが切ないです。

Q4:どんな状況でこの本を読みたいですか?

毎日、夜寝る前とかに読みたい。繰り返し読むうちに暗誦できるようになったらいいなと思います。

Q5:この本にまつわる印象的な記憶や思い出を教えてください

引用された53の詩歌について、佐藤春夫は本を参照せずにほぼ記憶のみで書いたという話を聞いてすごいと思いました。だからたまに間違えるんだけれども、読者に指摘されると素直に謝って訂正するところが可愛いです。

空想製本屋から

著者ならではの視点で、古今東西の詩歌をユーモアを織り交ぜながら紹介している素敵な本です。
お持ちの本の表紙が少し痛んでいることもあって、装釘にも拘りがあった著者も納得するような新たな美しい本を、とお仕立て直しをご希望されました。
お客様の本のイメージ「夕暮れ」を表すように装飾紙を染め、さらに小さな星の箔押しを施しました。