

井上奈奈さんのあたらしい絵本「うさぎまでのおさらい」(ビーナイス刊)の製本監修を、縁合って空想製本屋がさせていただきました。
作家が紡いだ物語をリソグラフ印刷で丁寧に刷り、糸かがり手製本をした、様々な方々の手が結集して出来上がった一冊です。
手工芸的な製本は、部数を多くつくることができません。それゆえ、商業出版の製本にお声掛けいただくことは、貴重な機会でした。
今回はもともと、比較的簡易な中綴じか平綴じの構造で作りたいとのご希望でした。
しかし、私が受注を受けて一冊ずつ作ると、時間も費用も必要で、販売する本の価格に見合う事がなかなかできません。
それならば、製本の方法をご提案して、「みんなで」作ろう!となったのでした。
ワークショップ形式で製本を教えながら、売り物の本を作る。
教わる人の楽しみを満たしつつも、質を保った本を作らねばなりません。(もちろんのこと!)
初めての試みでしたが、出版社のビーナイスさんがあっという間に、作業の参加者を集めてくださったのでした。
2日間で、のべ15名の方が参加してくださいました。
作家の井上さんや、会場も提供してくれた中野活版印刷店さん、デザイナーさんや、イラストレーターさん、元々本に関わる人たちも多かったせいか、作業は順調に進み、最初の心配をよそに、2日間で100冊を無事に仕上げることができました。
初めて製本をする方々に対して、質を求めるというのは酷な気もしていたのですが、みなさん「きれいな本を作ろう!」という気持ちが高く、楽しみながら作業していただけたので安心しました。
ソフトカバー装、中綴じの糸かがりといっても、量産本のそれとは異なる、細部のつくりにこだわった造本となるよう、
手だからこそできることを大切に、努めました。
5つ目綴じ、チリをつくったこと、表紙のがんだれ、手に持ったときの柔らかさ、などなど、丁寧に手で作ったからこその本の息づかいが、そこにはきっと宿っているはずです。
こちらの本は、荻窪・Titleさんでの井上さんの展示「うさぎ、くま、わたし、泣く」で販売をします。
前作の「くままでのおさらい」(こちらは美篶堂さんによる、美しい上製本、そしてリソグラフ印刷です)とともに、その世界感をぜひご覧ください。




2017年4月6日(木)ー 2017年4月23日(日)
Title 2階ギャラリー
12:00 – 21:00 水曜・第三火曜休み
*イベント開催日(4月10日・21日)は18:00にて終了 最終日23日は19:00にて終了
きみとわたしのさかいめは どこだろう?
綴じられているのは、祈りにも似た「やさしさ」が紡いだ物語。——–
昨年秋、ビーナイスより美篶堂手製本の特装版とハンディ版にて同時刊行された、絵本『くままでのおさらい』。この春、スピンオフ作品として製本監修に空想製本屋を迎え『うさぎまでのおさらい』が新たに生まれます。展示では、2つの物語の間を行きつ戻りつ、一冊一冊丁寧に紡がれた本の世界をお楽しみください。
*展示期間中、『うさぎまでのおさらい』(糸かがり手製本)が会場限定で販売になります。
*展示期間中の4月10日、TALK EVENT「本を作るということ」を開催します。こちらのページよりお申し込み下さい。http://www.title-books.com/event/2620
展示協力:ビーナイス 中野活版印刷店






「本の庭、庭の本」MONONOME PRESS from 空想製本屋
2017年2月3日[金] – 2月20日[月]at circle [ gallery & books]
OPEN 12:00 – 19:00 (CLOSE:火・水・木曜日)
作家在廊日:2月5・12・19・20日
移り行く季節を本にして表現したい。
そう願いながら、庭の草木で紙や糸を染め、四季の言葉を編み
手製本リトルプレス「庭の本」を制作してきました。
この度、二年にわたる試みが「庭の本 冬」の刊行をもって完結します。
草木染めの写真や手製本の工程、季節の詩歌、
春夏秋冬の「庭の本」が出来上がるまでの過程を展示し
circleにて、本からなる庭を開きます。
あわせて、庭の本の制作過程を収めた写真集も展示販売いたします。
早春の本の庭へ、どうぞお越しください。
編集協力/そらみつ企画 写真協力/スズキ チヒロ(ズアン課)
【関連イベント】 ワークショップ 「庭の採集帖をつくる」
circleのある「やぼろじ」内の草木で染めた糸を使って、拾った草花を貼り付け、飾っても楽しめる採集帖を手製本でつくります。
南天の枝葉で草木染めした糸(淡い黄色に染まるのです)を綴じ糸に用い、台紙を針と糸でかがります。
複雑に見える綴じ方ですが、基本に少しアレンジを加えるだけ。初めての方でも大丈夫です。


日時:2月12日[日]
1部/11時00分~13時30分
2部/14時30分~17時00分
参加費:3,500円(1ドリンク付き)
定員:各回5名(要予約)
ご予約はメールにて承ります。
件名を「庭の本ワークショップ参加希望」とし、本文にお名前・電話番号・人数をご記入の上、shop@circle-d.meまでお送りください。
参加者には折り返し詳細をメールいたします。
circle
国立市谷保5119 やぼろじ内 TEL 042-505-8019
□JR南武線谷保駅北口より徒歩5分
□JR中央線「国立駅」南口よりバス10分、
※京王バス「国17・国18」乗り場、
停留所「国立府中インター入口」から徒歩2分
個展開催にあたって、長い前書き。
二年ほど前から、お客様の本や依頼された本を作るというそれまでの受注制作とは別に、
空想製本屋自ら企画、そしてもちろん手製本で制作するリトルプレス MONONOME PRESSをはじめました。
作品として本を作り、そして販売する、というのは実は初めてのこと。
その最初のテーマとして選んだのは、草木でした。
生まれ育った地が陶芸の町だったこともあり、自然物を活かして制作をする、工芸やクラフトというものに、ずっと馴染んできましたし、憧れてもいました。
私が生業として選んだ手製本は、手仕事には違いないけれど、「本」という、人の思索が詰まったものを素材とします。
工芸や、クラフトの一部ではあるかもしれないけれど、その内容を尊重する分、完全なる工芸、製本家の作品とは言い切れないとずっと思ってきました。
本は内容ありきのものだというのは今でももちろん前提にしていて、中身のない本は作りたくないし、本のかたちを考える際にも、内容を自然に体現できるような形を目指しているのには変わりありません。
けれど、
自然から素材をもらって、それを活かして日用に適う、そして美しいものを作る、ということが手製本でもできないか、という思いは、
受注制作の仕事が充実していくにつれ、濃くなってゆきました。
庭のあるアトリエに越してしばらく経った頃、ここでなら、やりたかったことができるのかもしれない、と思ったのでした。
自然と手が結びあって出来上がる本、土から生まれ、土に還る本を、作ってみたいと。
前後して、ワークショップを通して草木染めの魅力を知ったり、力強い編集の助っ人がみつかったりと、長年あたためていた思いが熟していたのかもしれません。
そんなわけで、MONONOME PRESSの「庭の本」は生まれました。
そらみつ企画さんが素晴らしい短歌や俳句、詩を選んでくれました。
平安の時のなかにも、100年前にも、そして今にも同じ季節を過ごし、同じ感覚を味わっているわたしたちがいるのだということ。
そう実感させてくれる言葉との出会いがいくつもありました。
庭の本の写真は、ズアン課のスズキさんがアトリエに通って、撮ってくれました。
自然の光の美しさにはっとする、素敵な写真です。
スズキさんは、展示で販売する写真集のデザインもしてくれています。
四季を通して庭の本を制作する中で、私自身、もちろん細やかな季節の変化に敏感になりましたし、
カレンダー的なコマ割の時間の流れから、
季節は、時間は、帯状に、ひとつづきに、流れてゆき、互いの季節が互いを内包するようにして、
抱え合っているんだなと実感するようになりました。そして自分もその一部なのだと。
そんなことを、庭の本を手に取って読んだ方が、感じてくれたら嬉しいなと思います。
庭の本が本になるまでの過程も、展示ではお見せするつもりです。
これが、ほんとうに工芸、クラフトと言えるのか?はなんだか作り終わったらどうでもいいことのような気がして、
自然の素材を用いて、手を通して出来上がった本に触れて、気持ちいいと感じてもらえたらそれでいいとも思います。
これまでは人の書いた本ばかり作ってきましたが、今回が、作品としての空想製本屋の、MONONOME PRESSの初個展ということになります。
会場は、緑に囲まれた、国立・谷保のcircleにて。庭の本のお取り扱い店でもあります。
訪れるだけで気持ちのよい場所です。
敷地内には食堂もあり、きっとゆっくりしていただけると思います。
展示期間中は、日曜、またその他も時間ができたら在廊する予定です。
お越しいただける皆様とお会いできるのを楽しみにしています。


9/16〜19まで行われるTHE TOKYO ART BOOK FAIR 2016に、空想製本屋の企画・発行するリトルプレス「MONONOME PRESS」が出展します!
庭の草木で染めた素材と季節のことばを編んだ春・夏・秋3種類の「庭の本」、オーダー製本で出る端紙とオーダーシャツ屋さんの端布を用いて制作した新作「はしばしノート」を展示販売します。
文庫本葉書と文庫本画廊を販売する、ブックピックオーケストラと共同出展です。
国内外のアートブックや写真集が集まるイベント。フードも充実しているので、ぜひ、遊びにいらしてください。
私は、9/16(金) 15:00-17:00くらい、
9/17(土) 18:00-20:00くらい、
9/18(日)、9/19(月)は全日、ブースに居ります。
空いている時間は受注製本についてのお話などもできるかと思います。
店を持っていない身としては、お客さんと直接お話して販売できる、貴重な機会。お気軽に、遊びに来てくださいませ。
THE TOKYO ART BOOK FAIR 2016
日程: 9/16(金) 15:00-21:00
9/17(土)・18(日) 12:00-20:00
9/19(月) 11:00-19:00
会場: 京都造形芸術大学・東北芸術工科大学外苑キャンパス
東京都港区北青山1-7-15(最寄駅:JR信濃町駅)
出展者名「ブックピックオーケストラの文庫本葉書と文庫本画廊+MONONOME PRESS」
※ブース番号 D-20
アクセス: JR 「信濃町駅」より徒歩5分
東京メトロ・都営地下鉄「青山一丁目駅」より徒歩10分
map→ (Click!)
URL: http://tokyoartbookfair.com/
新作の「はしばしノート」は、空想製本屋の受注製本で出てしまう端紙を綴じ合わせ、オーダーメイドシャツ屋「holo shirts.」さんの端布を表紙に仕立てたノートです。
ふと思いついた言葉のはしばしを書き留めるノートとして、日々のはしばしを記録するアルバムとして、お使いください。
端紙と端布の組み合わせは一冊ずつ違います。端紙には、10年前の作品づくりの時にタイトルを試し刷りした紙や、ポーランド製のノートの切れ端、スイスで求めたルーズリーフなど…が綴じ合わされています。
走り書きしたメモや「ことば」も混ざっているかも?
真四角の、105ミリ×105ミリのサイズと、少し縦長の105ミリ×125ミリのサイズをご用意しました。
紙とシャツのきれはしから生まれたノート、お手にとっていただけると嬉しいです。
:はしばしノート
:布装ハードカバー、コプティック製本/80p
:定価2,500円

はしばしノート

庭の本 秋

庭の本 春



暦の上では秋も近づいていますが、暑さはこれからが本番。
季節の草木で素材を染め、季節のことばを編んだ「庭の本」。既刊の春、秋に続き、夏の本が出来ました。
今回も編集はそらみつ企画さん。夏を詠んだ近代俳句を選んでくれました。高浜虚子、正岡子規、飯田蛇笏、村上鬼城など104もの句が並び、
新緑の初夏から、秋の気配を感じる晩夏まで、ページを繰るごとに夏の色が濃くなっていきます。
染色は、表紙とリボンを藍の生葉で染め、綴じ糸はミント、ローズマリー。すべてアトリエの庭で育てた植物で染めました。
暑い中で感じる風や水の涼やかさを思い起こすような、あさみどりの本になりました。
リソグラフの刷り色は折ごとに変えているので、アンカットの袋を切り開くと、違った色が出てくるのも、楽しいところです。
そして今回から価格改定をし、お求めやすくなりました。春、秋の本とも、今後は夏と同じ新価格になります。
より多くの方の元へ、届けられたら嬉しいです。
残り少ない今年の夏を、庭の本とともに、味わっていただけますように。




MONONOME PRESS 「庭の本 夏」
製本:リボンリンプ製本
染色:表紙、リボン…藍(生葉染め)/綴じ糸…ミント、ローズマリー
銀箔押しタイトル、本文リソグラフ印刷、地アンカット
夏を詠んだ104の近代俳句を季節順に掲載。
定価6,400円
50部限定、スターネット(栃木・益子町)、circle(東京・国立)、また通販にて販売しています。
通販をご希望の方は「庭の本購入希望」としてinfo{at}honno-aida.comまでメールをお送りください。


季節は春から、すっかり初夏に移り変わっています。緑が眩しい季節です。
6/20(月)、ミュゼ浜口陽三・ヤマサコレクションの南桂子展に合わせて、手製本ワークショップ「重ねて物語をつむぐノート」を開催します。
銅版画家・南桂子は、鳥、樹、たたずむ少女、果てしなく広がる空といったモチーフを使い、童話的とも評される独特の世界を描きました。
一見、可愛らしく少女的でもあるその画風は、実は緻密な作業と丹念に計画された画面構成の上に成り立っています。
今回ワークショップを開催するにあたり改めてその画業に触れ、高い技術力と独自の感性を併せ持つ希有な人物だったのだと感じました。
いくつもの版を重ねて、その重層性により奥行きのある画面を作りだす、銅版画。
ばらばらの紙を重ねて綴じて、一つの世界を織り上げる手製本。
南桂子の作品から連想する「透明感」、「風」をキーワードに、手のひらサイズのノートを作ります。
銅版画と手製本、技術は違いますが、南桂子の世界観を、紙と糸を用いて織り上げる体験をしていただけたらと思います。
開催は展示会場の中で。絵に囲まれてのワークショップ、とても楽しみです。
●手製本ワークショップ 「重ねて物語をつむぐノート」
様々な色や形、質感の紙を組み合わせ、製本の基本技法である「一折中綴じ」でつくるノート。銅版画の版の重なりのように、紙の積層が一つの風景や物語を生み出します。半透明の表紙からは中の紙が透けて見え飾って楽しむこともできます。
講 師─本間あずさ(製本家/「空想製本屋」店主)
日 時─6/20(月)
【午前の回】10:30~13:00
【午後の回】14:00~16:30
定 員─各回10名
持ち物─はさみ、カッター
A5サイズまでの好きな紙を綴じることも可能。使用したい紙があればご持参ください。
参加費─2300円(入館料・材料費込)
申 込─5/26(木)12:00より電話にて受付開始(先着順)
※休館日の開催ですが、参加の方は展覧会をご覧いただけます。
※小学校高学年から参加可能。(要大人同伴)
※お申込み後、開催直前でのキャンセルはご遠慮ください。
会場:ミュゼ浜口陽三・ヤマサコレクション
東京都中央区日本橋蛎殻町1-35-7
Tel:03-3665-0251 Fax:03-3665-0257


空想製本屋の企画制作するリトルプレス、庭の本。
季節のことばを編み、草木染めした素材を用いて手製本で作っています。
去年のちょうど今ごろ、第一冊目の春の本を刊行しました。
そして一年が巡り、また春。今年も本のために草木染めをはじめました。
染色の工程を少しご紹介します。
春の本の表紙は、椿の花びらで染めています。6冊分の表紙を染めるのに、今回は椿約40個を使いました。
庭の本、とはいえもちろん庭だけでは間にあわないので、近くの公園などからも落花した椿を集めます。
そして椿を水とお酢と混ぜ、ミキサーで細かく砕きます。鮮やかなピンク色はまるでストロベリーソースのようで美味しそう。


そして、この染液をバットにうつし、紙を浸して染めるのです。
天地返しを繰り返し、2時間強。染液から引き上げたら、みょうばんを溶いた水で媒染。
窓に貼り付けて乾かし、このあとプレスして紙染め完成です。
季節の果物を閉じ込めたジャムのように、春の花の色を、本に留められたらと思いつつ制作しています。
毎日せっせと椿の花を集める春の日々は、しばらく続きそう。

庭の本 春は、春を詠んだ和歌と俳句が季節順に編まれています。今年は立春の日から、本とともに季節の移ろいを楽しんでいます。
桃の節句の今日はちょうどこのあたり。
朝日かげにほへる桃の花ざかり空さへ色にうつろひにけり 詠み人しらず


桜の歌まではまだもう少し。この折は、初桜から散る桜まで、まるごと桜の歌です。
アンカット、折ごとに紙の色も刷り色も変えています。
日が経つごとに、ペーパーナイフでページを切り開いて読むのが楽しみです。
MONONOME PRESS 「庭の本 春」
製本:列帖装(れっちょうそう)
染色:表紙…藪椿/紫木蓮、綴じ糸…桜/ヨモギ
白箔押しタイトル、本文リソグラフ印刷、地アンカット
万葉集~近代までの春を詠んだ76 の和歌と俳句を季節順に掲載。
定価7,900円
50部限定、スターネット(栃木・益子町)、circle(東京・国立)、また通販にて販売しています。

庭の三椏の花は今にも開きそう。 少しずつ春が進んでいきます。
この春、数年振りにホームページをリニューアルしました。
2008年の9月、はじめての個展をした時にホームページも同時にスタートして、7年半の長い間、色々なことを書き綴ってきました。
会社員時代、まだまだ製本が仕事になっていなかった時から、スイス留学を経て、少しずつ仕事がかたちになっていく過程をともにした、思い入れのあるホームページでした。
最近はあまり更新もできなくなっていたし、仕事の実情とずれを感じてもきていたので、思い切って全面リニューアルすることにしました。
前の日記がもう読めなくなってしまうのは残念というありがたい声もいただいたので、何かの機会にまとめられたらと思っています。
旧ホームページをきっかけに出会った方たちに、たくさんの感謝をこめて。
またここから、あたらしく、はじめようと思います。
日記もできるだけ綴っていきたいと思っていますので、どうぞよろしくお願いします。
新ホームページははじまったばかり。よりよい場に育っていきますように。